镜子法则案例
この物語は、登場人物の名前や職業などを変えていますが、実話に基づいています。
案例为真实事件,出场人物的名字或职业等为虚构。
PART 11
躊躇していたらますます電話をかけにくくなると思った栄子は、意をけっして電話をかけた。
荣子觉得,纠结的话,打电话会变得越来越难,就下决心打了电话。
電話に出たのは、母だった。
接电话的是妈妈。
「私だけど」
“是我”
「あら、栄子じゃない。元気にしてる?」
“啊~荣子啊!挺好的吧!”
「うん、まあね。……ねえ、お母さん、お父さんいる?」
“嗯~还行。……嗯~妈,爸爸在吗?”
「えっ?お父さん?あなたお父さんに用なの?」
“啊?爸爸?你找你爸有事儿?”
「う、うん。ちょっとね」
“嗯、对。有点儿事儿。”
「まあ、それは珍しいことね。ねえ、お父さんに何の用なの?」
“呀!真新鲜啊!嗯~你找你爸有啥事儿?”
「えっ?えーと、ちょっと変な話なんだけど、説明するとややこしいから、お父さんにかわってくれる?」
“啊?那个~这事儿有点儿别扭,解释起来麻烦,你让爸爸接电话。”
「わかった、ちょっと待ってね」
“知道了,等一下。”
父が出てくるまでの数秒間、栄子の緊張は極度に高まった。
在等父亲接电话的几秒钟里,荣子紧张到了极点。
ずっと父のことを嫌ってきた。父に心を開くことを拒んできた。
一直都讨厌爸爸。拒绝向爸爸敞开心扉。
その父に感謝の言葉を伝えて謝るなんて、普通に考えてできっこない。
向那样的爸爸道谢道歉什么的,平时根本想都不会想。
しかし、優太のことで悩みぬいた栄子にとって、その悩みが深刻であるがゆえに、普通だったら、できそうにない行動をとっているのだった。
但是,对于因优太的事情而烦恼的荣子,因为这个烦恼的严重,让荣子采取了平时根本无法做到的行动。
もしも、その悩みをなんとかできる可能性があるなら、わらにもすがりたいし、どんなことでもする。
如果做什么有能够解决那个烦恼的可能性的话,就算是根稻草也想抓住,不管什么都会去做。
その思いが、栄子を今回の行動に向かわせたのだ。
那个想法促使荣子采取了这个行动。
父が電話に出た。
爸爸接了电话。
「な、なんだ?わしに用事か?」
“怎、怎么了?找我有事?”
栄子は、自分では何を言っているかわからないくらい、パニック状態になりながら話しはじめた。
荣子不知道自己在说什么,在恐慌中开始说话了。
「あっ、あのー、私、今まで言わなかったんだけど、言っといたほうがいいかなーと思って電話したんだけど、……えーと、お父さん、現場の仕事けっこう大変だったと思うのよ。お父さんが頑張って働いてくれて、私も育ててもらったわけだし。あのー、私が子どものころ、公園とかも連れて行ってくれたじゃない。なんていうか、ありがたいっていうか、感謝みたいなこと言ったことないと思うのよ。それで、一度ちゃんと言っておきたいなと思って……。それから私、心の中で、けっこうお父さんに反発してたし、それも謝りたいなと思ったの」
“啊、那个、我一直也没说,但我觉得还是说了好,就打个电话……那个、爸爸、在现场的工作非常辛苦吧!爸爸努力工作把我养大。那个、我小时候,爸爸不是还带我去公园么?我的意思是,我很感激,可我没有说过感恩之类的话。所以、我想好好地说一次……。然后、我心里,对爸爸很反感,我也想为此道歉。”
ちゃんと「ありがとう」とは言えなかったし、「ごめんなさい」とも言えなかった。
没能好好说“谢谢”,也没能好好说“对不起”。
だけど、言うべきことは一応伝えた。
但是该说的话大体是说了。
父の言葉を聞いたら、早く電話をきろう。そう思った。
荣子当时想,要是听到爸爸说话,就尽快挂电话。
しかし、父から言葉が返ってこない。
但是爸爸什么话都没回。
何か一言でも言ってくれないと電話がきれないじゃない、と思ったときに、受話器から聞こえてきたのは、母の声だった。
荣子想着什么话都不回的话,不是没法挂电话了吗?这个时候,电话中传来了妈妈的声音。
「栄子!あなた、お父さんに何を言ったの?」
“荣子!你跟爸爸说什么了?”
「えっ?」
“啊?”
「何かひどいこと言ったんでしょ!お父さん、泣き崩れているじゃないの!」
“你说了什么过分的话了吗?你爸哭了!”
受話器から、父が嗚咽する声が聞こえてきた。
从电话中传来了爸爸呜咽的声音。
栄子はショックで呆然とした。
荣子惊得呆住了。
生まれて以来、父が泣く声を一度も聞いたことはなかった。
有生以来,从来没听爸爸哭过一次。
父はそんな強い存在だった。その父のむせび泣く声が聞こえてくる。
爸爸是那么强大的存在。能听到那样坚强的爸爸抽泣的声音。
自分が形ばかりの感謝を伝えたことで、あの強かった父が嗚咽しているのだ。
荣子形式上的表示了感谢,那么坚强的爸爸就哭了。
父が泣く声を聞いていて、栄子の目からも涙があふれてきた。
荣子听着爸爸的哭声,也流下了眼泪。
父は私のことをもっともっと愛したかったんだ。親子らしい会話もたくさんしたかったに違いない。
爸爸想更爱更爱我的。爸爸一定想跟我说很多亲子对话的。
だけど、私はずっと、父の愛を拒否してきた。
但我一直拒绝爸爸的爱。
父は寂しかったんだ。
爸爸一直很寂寞。
仕事でどんなにつらいことがあっても耐えていた強い父が、泣き崩れている。
工作无论多么辛苦都忍耐着的坚强的爸爸,哭了。
娘に愛が伝わらなかったことが、そんなにもつらいことだったんだ。
没把爱传达给女儿是那么痛苦的事啊!
栄子の涙も嗚咽へと変わっていった。
荣子也从流泪变成了呜咽。
しばらくして、また母の声。
过了很久,又传来了妈妈的声音。
栄子!もう落ち着いた?説明してくれる? 」
“荣子!已经冷静下来了吗?能跟我解释一下吗?”
「お母さん、もう一度お父さんにかわってほしいの」
“妈,我想再跟爸爸说一下”
父が電話に出た。涙で声が震えているようだ。
爸爸接电话了。因为哭泣声音发颤了。
「栄子、すまなかった。わしは、いい父親じゃなかった。お前にはずいぶんイヤな思いをさせた。ううっ……」
“荣子,对不起。我不是个好爸爸。让你留下了非常不好的回忆。呜呜”
再び嗚咽が聞こえてきた。
再次听到了呜咽的声音。
「お父さん。ごめんなさい。わたしこそ悪い娘でごめんなさい。そして、私を育ててくれてありがとう。うっ、うっ……」
“爸爸。对不起。我才是个坏女儿,对不起。而且,感谢你把我养大。呜呜”
栄子の声も嗚咽によってかき消された。少し間を置いて、再び母の声。
荣子的声音也淹没在呜咽声中。又过了一会儿,再次传来妈妈的声音。
「何が起きたの?また、落ち着いたら説明してね。いったん、電話きるよ。」
“发生什么了?等冷静下来再说吧。先挂电话了啊!”
栄子は、電話をきってからも、しばらく呆然としていた。
荣子挂掉电话后,呆了很久。
20年以上もの間、父を嫌ってきた。ずっと父をゆるせなかった。自分だけが被害者だと思っていた。
20多年了,讨厌着爸爸。一直没能原谅爸爸。认为只有自己是受害者。
自分は父の一面だけにとらわれて、別の面に目を向けようとはしなかった。父の愛、父の弱さ、父の不器用さ、これらが見えていなかった。父はどれだけつらい思いをしてきたんだろう。自分は父に、どれだけつらい思いをさせてきたんだろう。
自己只看到了爸爸的一面,没有去试着看爸爸的另一面。爸爸的爱、爸爸的软弱、爸爸的不精明、这些都没看到。爸爸有多么痛苦啊!我给爸爸留下了多么痛苦的回忆啊!
いろいろな思いがかけ巡った。
思绪万千。
父に対する感謝の気持ちも湧いてきた。
对爸爸的感谢之情也随之喷涌而出。
勇気を出して電話してよかったとしみじみ思った。
深切感受到鼓起勇气打电话真是太好了。